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医師の残業に年2000時間を上限とする案

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2019年1月10日朝日新聞一面

www.asahi.com

「医師の残業上限、年2000時間も検討」ってコトなのですが、すべての医師を対象とした上限ではありません。

労働基準法の改正により、労働時間に上限が設定されることになりますが、「この上限まで残業を減らすと診療に大きく影響する場合に特例を認め、年1900~2千時間程度以内で検討する」ということです。

ところで、記事中にある「企業に適用される上限は、休日労働を含めて年最大960時間」という箇所に違和感ありませんか?

厚生労働省のホームページに昨年末公開されたばかりの資料「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」を確認してみましょう。

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時間外労働の上限規制の図

法律による上限(原則)は、「月45時間、年360時間」です。さらに、法律による上限(特別条項/年6か月まで)では、「年720時間、複数月平均80時間、月100時間未満」です。

あれ?どこにも「960時間」なんて数字は書かれていませんね?朝日新聞が間違っているのでしょうか?実はこの部分、労働基準法の知識がないと読み間違える可能性が高いと思っています。

労働時間の内訳をザックリと3つに分けてみましょう。「法定労働時間」「時間外労働時間」「(法定)休日労働時間」の3つです。

労働基準法では、この3つは別々にカウントすることになっています。もう一度、厚生労働省のパンフレットの図を確認してみてください。

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特別条項の上限時間の拡大図

「年720時間」と、「複数月平均80時間*」「月100時間未満*」との間の違い、わかりますか?

そうです。末尾の「*」が違います。「*」は、「*休日労働含む」と書いてありますね。つまり、「年720時間」に休日労働は含まないのです(つまり、時間外労働時間のみカウントした上限ということです)。

休日労働を含まない」ということは、「別途休日労働を行うことが可能」ということになります。休日労働を含んだ上限は「複数月平均80時間」「月100時間未満」なのですから、結局「80時間 × 12ヶ月 = 960時間」が、法定労働時間を超えた「時間外労働時間」「休日労働時間」の上限になります。

半年ほど前にも検証してみたので、ご興味があれば、あわせて読んでみてください。

www.rows.jp

(法定)休日労働時間が発生するためには、「1週間休み無し」で働く必要があるワケで、結構たいへんだと思うんですけど、その「たいへんな条件」が揃ってしまうと、最大960時間まで可能になってしまうのですね。

「どうして時間外労働時間の上限規制を行う必要があるか」を考えると、「年2000時間上限」というのはとてつもない数字のように思えます。「35年度末まで」という暫定的な措置であるにしても、具体的にどうやって減らしていくのか、キチンと議論して確実に実行されることを望みます。