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持ち帰り労働時間の要件は、結構キビシイのかもしれない(不安要素)

年明けから、働き方改革実現会議において、労働時間の上限規制について話し合いがおこなわれています。

長時間労働の規制については、今の国会で結論をだす・・・といった二階自民幹事長の言葉がニュースになっていましたね。

シンプルでわかりやすい規制を希望します(長時間労働規制問題)

規制が実現すると、労働時間を短縮しなければならない会社もでてくるわけです。問題は、労働時間を短縮するからといって、スグに業務量を削減したり、生産性の向上が実現したりするとはかぎらないことです。労働者からみれば、業務量が減れば利益が減り、結果として給料が減るかもしれません。生産性を向上させると言っても、いままでサボってたワケではないのですから「急に向上する」と考えるほうが不自然だとさえ感じます。

そこで、回らない業務をなんとか回すため、「持ち帰り労働(風呂敷残業ともいうそうです)」が増えるのではないか、いや、もうすでに持ち帰り労働が増えている!という声も聞かれます。

ここでは、持ち帰り労働が労働時間といえるのか、その要件をご紹介しましょう。「新しい労使関係のための労働時間・休日・休暇の法律実務(安西 愈氏著)」という本に詳しい解説があります。

じつは、「持ち帰り労働」というぐらいなので、その時間は当然労働時間に該当するのだろうと思うのですが、かならずしもそうでは無いようなのです。「新しい労使関係のための労働時間・休日・休暇の法律実務(安西 愈氏著)」によれば、労働時間の要件となる拘束5要件の判断基準があるようです。

拘束5要件の判断基準(労働時間の要件)

  1. 一定の場所的な拘束
  2. 一定の時間的な拘束
  3. 一定の態度ないし行動上の拘束(規律)
  4. 一定の業務の内容ないし遂行方法上の拘束(業務拘束性)
  5. 一定の労務指導的立場から行われる支配ないし監督的な拘束(支配と拒否の不利益扱い)

労働時間とは、上記5要件のすべてを満たす場合に、原則、労働時間と判断されるということです。

では、5要件に照らした場合の持ち帰り労働は、どのようになっているのでしょうか?

持ち帰り労働の拘束5要件

  1. どこで仕事をしても良い
  2. いつやろうとかまわない
  3. テレビを見ながらでも、酒を飲みながらでもかまわない
  4. どんなやり方でやっても自由
  5. 労務指揮がない(支配下におくことが許されない私生活・家庭の場での行為)

ということで、持ち帰り労働の自宅における実施時間は、労基法第32条の労働時間ではない。これが、「新しい労使関係のための労働時間・休日・休暇の法律実務(安西 愈氏著)」に書かれている結論です。ただし、自宅持ち帰りで行った業務について、労災保険や公務員の災害補償の「業務上疾病」の認定上これを業務時間と取り扱うことは、従事している業務の性質上ありうることである・・・とも書かれています。

カンタンにまとめると、「労基法32条の労働時間ではない」が、「業務上疾病の認定上」業務時間と取り扱われることはありうる」ということです。

労働者からみれば、なんだか納得がいかない結論です。「労基法32条の労働時間ではない」なんていわれたって、その時間を使って働いた結果として「会社の業務を回す」のです。会社は労働の成果を受け取るのですから、その対価としての報酬を支払わなくても許されるのでしょうか?

これについて安西氏は、次のように結論づけています。

持ち帰り労働の報酬はどうなるか?

いずれにしろ、自宅持ち帰り労働は、労働時間には該当せず、結局、その事務処理の対価の支払いの有無のみの問題に帰せられることになり、その場合も事前に対価を取り決めていないと具体的な報酬請求権はないと解される。 「新しい労使関係のための労働時間・休日・休暇の法律実務(安西 愈氏著)」

本当に?・・・と思われるでしょうか。時代が変わり、テレワークが推進されている現在でも同様の判断をされるのかどうか、私個人は疑問に思っています。ただ、著者の安西氏は、労働基準監督官から弁護士になったという異色の経歴の持ち主ですから、労基署の監督官の中には、安西氏と同じような考え方の人もいるかも知れません(誤解の無いように書いておきます。「法違反かどうか?」ということと「監督署が是正勧告や指導を行うかどうか?」ということは別の話です。法違反でなくとも、監督署が不適切と考えれば、当然に是正勧告や指導をすることになるでしょう)。

この本の説明を読むと、家に持ち帰っても仕事したのには変わりないのだから、当然に報酬が支払われるハズだ・・・という考えが認められるのかどうかアヤシイな・・・と不安を感じるのは私だけでしょうか?

当然ながら、「労基法第32条の労働時間」でなくても「報酬請求権」がなくても、「業務上疾病の認定上業務時間と取り扱われる」のであれば、持ち帰り労働の結果健康を害したりしたときの「責任は会社にある」という判断になるのでしょう。電通事件でもキッカケは労災認定でした。

「労働時間の上限規制」が実現し過重労働の縮減が急ピッチで進められるとき、現場の業務のヒズミ解消のため「持ち帰り労働」が生じることは容易に予想できる問題です。

結局労働者にシワヨセがくることの無いように、キチンとしたルールの確立が望まれます。労働者の未来がなければ、会社にだって未来はないのですから。

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