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Excelで労働時間を集計する「集計すべき9つの労働時間注意ポイント」 4/5

 前回、法律の観点から「生産性向上」「業務効率化」のために、集計すべき9つの労働時間を確認しました。とても気合をいれて書いたので、今回は力を抜いてサクッとおさらいをしたいとおもいます。

 なんだったら読み飛ばしてもらっても良いくらいですが、「法改正情報」なども思いつくままに書き留めておこうと思いますので、サッと目を通してもらえば幸いです。

1. 所定労働時間

 所定労働時間の「所定」とは、「決められていること」という意味です。労働契約や就業規則で○○時~○○時などと、決められている労働時間をいいます。ちなみに、労働契約の締結に際し「始業の時刻」「終業の時刻」「休憩時間」を書面で労働者に明示しなければならないことになっているので、所定労働時間というのは、どんな労働者にも必ずあるはずです。

 所定労働時間をどのように決めるかは、基本的に契約で自由に決めればいいんですけど、労働基準法で「最低の基準(言い換えれば、労働できる最長の時間)」が定められています(法定労働時間といいます)。それが、「1週間40時間、1日8時間」です。「40時間なのか、8時間なのか、どっちなんだ?」って聞かれることがありますけど、答えは「どっちも」です。たとえば、1日の労働時間が8時間の場合、1週間は5日を超えて働くことはできません。1週間40時間を超えるからです。また、労働日が週3日だからといって、1日10時間働くことはできません。1日8時間を超えるからです。

 また、労働基準法の書き方は「労働させてはならない」と書かれているので、「1週間40時間、1日8時間」を超えて働かせることを禁止しています。なので、所定労働時間は基本的に「1週間40時間、1日8時間以内」ということになります。

 ただ、この所定労働時間は、法律の要件を適切にみたして手続きをすることで「変形」したり「フレックス化」したりすることができます。変形したりフレックス化したりするには「法律の要件を適切に満たす」という条件が必要です。

 労働時間を集計するときは、所定労働時間をベースにすると簡素化できることが多いです。

2. 所定外労働時間

 シンプルな言葉の使い方として、所定労働時間「以外」の労働時間は、所定外労働時間です。実務上こういう使い方をしている会社は多くあります。ただし、「管理のために集計する」という目的を考えると、「法定労働時間内の所定外労働時間」と「法定労働時間を超えた部分の所定外労働時間」を区分して管理することをおすすめします。法定労働時間を超えた部分には、法律で割増賃金の支払いが必要であったり、制限がかかったりするからです。

所定労働時間の区分

 余談ですけど、言葉ってキチンと定義されていないことが多いので、誤解が生じやすい印象です。就業規則には、キーポイントとなる言葉の定義を書くことをおすすめします(けっこう、トラブルになることがあります)。

3. 法定外労働時間(時間外労働)

 シンプルにいうと「1日8時間、1週間40時間」を超えた時間が法定外労働時間です。ただし、法律にもとづいて変形したりフレックス化したりするケースがあるので、「法律にもとづいて適切に設定された所定労働時間」が「1日8時間、1週間40時間」を超えるなら、その超えた時間が法定外労働時間です。「1日8時間、1週間40時間」または、「法律にもとづいて適切に設定された所定労働時間」が「法定内労働時間」だと考えるとわかりやすいかもしれません。

 昭和の時代は、「法定労働時間=所定労働時間」という労働者が多くいたので、労働時間の集計・管理もシンプルでした。今は、「多様な働き方(労働時間)を組み合わせて業務をおこなう時代」なので、労働時間の集計・管理のハードルが格段にあがっているように感じます。

 ところで、法律で「労働させてはならない」と規定されている法定外労働時間がなぜ存在するのか・・・と、素朴な疑問が生じませんか?法律で決まっている以上、「働かせては、ダメ」なんですが、同じく法律で定められた話し合いをして取り決めをしたうえで適正に手続きするとOKになるという規定があるのでした(この取り決めを36協定といいます)。結果として、適切な方法で「法律を超えて働く時間が存在する」ということになります。

 また、法改正により、法定外労働時間には、新たに制限がかかりました。制限の概要は次の通りです。制限以内の労働になるように調整しないといけないので、労働時間を集計して管理する必要があります。

時間外労働の上限は、原則として⽉45時間・年360時間です。 臨時的な特別の事情がある場合(年6回まで)でも、次の制限が適用されます。

「時間外労働 … 年720時間以内」

「時間外労働+休⽇労働 … ⽉100時間未満かつ、複数⽉(2〜6か⽉)平均で80時間以内」

 この記事は、Excelで労働時間を集計することを目的に書いていますので、制限の詳しい説明はしません。気になる人は検索してみてください。なお、法定外労働時間には、「必ず」割増賃金が発生します。割増賃金率については、前回の記事の最後の方にまとめて書いたのでご確認ください。

www.rows.jp

60時間超の時間外労働時間(法定外)

 ここで60時間というのは、1ヶ月の法定外労働時間の合計が60時間ということです。なので「60時間超の時間外労働時間」というとかならず「法定外」になりますので、割増賃金が発生します。

 60時間超の時間外労働は、割増率がUPするので注意が必要です(大企業は2010年4月、中小企業は2023年4月から適用)。割増率は5割(50%)です。新聞やテレビなどの報道では時間外労働の上限規制ばかり目立ちますが、この60時間超の時間外労働の割増率アップは経費アップにもつながるし、労働者の健康や定着率にも影響が大きいので要注意です。

5. 所定休日労働時間(法定内)

 「休暇」と「休日」って、よく混同されることがあります。どちらも労働者が休んでいる日なのですが、「休暇:労働義務がある日の労働を免除した日」「休日:労働義務がない日」という違いがあります。

 たとえば、「1週間のうち、月、水、金の3日間に1日5時間働く」という従業員の場合、「火、木、土、日」が休日です。そこで、特別に木曜日に5時間働いた場合は、この5時間が「所定休日労働時間(法定内)」になります。法定内なので、通常は割増賃金が発生しません(就業規則等で特別な取り決めがある場合は別です)。

 休日には「所定休日」と「法定休日」があります。「法定休日」は1週間に必ず1日確保しなければならない休日です(4週間で4日確保すればOKという変形休日制の場合もあります)。どの日が法定休日になるかは、基本的には就業規則に書いてあります。書いていなければ、実務的には「日曜から始まる1週間の労働実績を時系列で確認していって、その日働いたら1週間1日の休日を確保できなくなる日」を法定休日とします。法定休日以外の休日は「所定休日」です。

 「所定休日」も「法定休日」も休みなんですが、その日に休日労働した場合の割増率が変わるので、厳密に区分する必要があります。労働時間の集計・管理の腕の見せどころですね。  

6. 所定休日労働時間(法定外)

 「所定休日労働時間(法定内)」は「「1週間40時間、1日8時間」を超えていないので「法定内」なわけですが、超えると「法定外」になります。ただし、8番目に説明する「法定休日労働時間」とは区別する必要があります(割増賃金率が変わります)。

 ここでは「所定休日労働(法定外)」と説明していますが、法律の取り扱いは「時間外労働」と同じです。法定外になると、かならず割増賃金が発生します(基本25%)。くどいようですが、就業規則等に「35%払う」と書いてあれば、35% の割増賃金を払ってください。

7. 60時間超の所定休日労働時間(法定外)

 「所定休日労働」の法律上の取り扱いは「所定外労働時間」と同じなので、「所定休日労働時間(法定外)」と「法定外労働時間」を合わせた時間が1ヶ月60時間を超えると割増賃金がアップします(50%になるのでした)。

 今回の説明では、すこし丁寧に「所定外労働時間」「法定外労働時間」「所定休日労働時間(法定内)」「所定休日労働時間(法定外)」などと分けて説明しましたが、シンプルに法定休日労働時間「以外」の時間を、「法定内労働時間」と「法定外労働時間」にわけて管理している会社も多いと思います。

 経費の管理という観点からシンプルに整理するのもアリだとは思いますが、効率的な働き方を確認するためには、それぞれの労働時間を分けて管理することをおすすめします。分けて管理しておいて、最終的に加算して整理することはできますが、加算された数字を分けることは困難になりますので。

8. 法定休日労働時間

 「法定休日」は1週間に必ず1日確保しなければならない休日だということは説明しました。4週間で4日休日を確保すればOKという変形休日制の場合もあるのでしたね。この「法定休日がいつか」ということを明らかにしてくれれば、労働時間の集計・管理がカンタンになるのですが、明確に決めていない会社もあります。決まってなければ、就業規則や法律の規定にもとづいて決める必要があります。実務的にいうと、給与計算のときに決められているはずですので、休日の割増賃金支払いの対象になっている時間を集計することが多いですね。

 ここで、法改正についての余談です。特に、「歴史の古い会社」は要注意です。

 労働基準法ができたとき(昭和22年)は、時間外労働も休日労働も、割増率は25%でした。とてもシンプルですね。しかし、平成6年に休日労働の割増賃金が35%になりました。特に、平日と休日をまたいで勤務するときに注意が必要です。改正されたのが、もう、ずいぶん昔の話なんですけど、「就業規則が昔のまま」って会社があったので、注意喚起の意味で書いておきます。

9. 深夜労働時間(他の労働時間とかならず重複します)

 最後です。

 深夜労働時間というからには「労働時間」です。いままで登場した労働時間「すべて」が、深夜時間帯(22時~5時)である場合には割増賃金を支払わないといけません。

 たとえば、所定労働時間は、通常割増率が「0」ですが、所定労働時間であっても深夜時間帯なら「25%」の割増が発生します。

「時間外で深夜」とか「休日で深夜」とか重複する場合は、割増率を足し算します。「60時間超の時間外労働時間(法定外)」を深夜にすると、75%割増です。なお、休日労働と時間外労働は、労働基準法では別カウントなので重複することはありません。

まとめ

 注意ポイントを書いてきました。歴史的な経緯のなかで法改正がおこなわれているので、区分しようと思うと結構複雑になります。労働時間を集計して管理するためには、この点を踏まえる必要があるので大変ですけど、適切に集計して管理できることは自分自身の強みになると思います。

 前回作った労働時間の表を、今回も参考につけておきます。

9つの労働時間の表