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【明日から通常国会】働き方関連法案を整理してみる

 いよいよ明日から通常国会が開催されます。

 

  これまで審議される審議される・・・って言われつつも、2回も流れてしまった「働き方改革関連法案」も、ついに提出される予定です。今朝のNHK 日曜討論の内容も、「9党激論!通常国会にどう挑む?▽与野党激論の焦点は 予算案・働き方改革は 憲法をめぐる議論は?」となっていて、働き方改革」が重要な論点となっていることがわかりますね。

 

 番組内で働き方改革関連法案で、気になる意見がありました。それは、今回の法案では、過労死防止につながる労働時間に関する「規制の強化」と、逆に過労死増加につながりかねない「規制の緩和」が一緒にされている・・・という意見です。

 

 いったいどういうコトなんでしょう。気になるので、第140回労働政策審議会労働条件分科会で配布された「 資料No.1 「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」(諮問)(PDF:593KB)」をもとに、「規制の強化」と「規制の緩和」をまとめてみましょう。

 

 今日の内容は、すこし専門的な内容になりますが、大切なポイントです。

 

 

過労死防止につながる規制の強化

1.時間外労働の上限規制

 「時間外労働の上限」を法律に明記する。

 まず、「限度時間」として「1ヶ月45時間・1年360時間(原則)」とする。また、「臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合」でも年6回までとし、「1年720時間・2ヶ月~6ヶ月の平均80時間・1ヶ月100時間未満」とする。

 

 この上限規制を1回見て理解できる人はいないと思います。とってもややっこしいので、以前カンタンにまとめて見ました。

 

www.rows.jp

 

 多くの過労死が「1ヶ月100時間未満」の時間外労働で起こっていることから、規制は不十分だ!・・・という意見もありましたが、「指針を作って、企業が労働時間を短縮するように指導する」ということです。

 

 なにより、いままで上限規制が「ない」状態から「ある」状態になるのですから、「規制の強化」といっても良いのではないでしょうか。

 

2.1ヶ月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率を中小企業にも適用する

 時間外労働が「1ヶ月60時間」を超えたら、割増賃金率を「5割以上」にしなければなりません。

 

 実は、中小事業主に対しては、この法規定の適用を猶予されていました(5割以上にしなくてもOKってこと)。

 

 この適用猶予に係る規定が廃止されます。結果として、会社は、1ヶ月60時間を超える時間外労働に対して、いままでより多くの割増賃金を払わなくてはいけなくなるわけですから、これも「規制強化」といっても良いですね。

 

 もっとも、サービス残業の問題があるので、キチンと法規定が履行されるようにしっかり見届ける必要があります。

 

3.年次有給休暇の5日間の強制取得

 年次有給休暇の日数が10日以上の労働者に対して、「5日を1年以内の期間に時季を定めることにより与えなければならない」という義務が設けられます。

 

  年次有給休暇は、言わずとしれた労働者の権利ですが、労働者が権利の行使をしなければ「与えなくても法違反ではない」という取扱でした。

 

 結果として、日本の有給休暇の消化率は50%以下です。ほとんど取れない会社もあるのではないでしょうか?

 

 この有給休暇の強制取得も、規制強化といっていいでしょう。

 

過労死につながりかねない規制緩和

 1.フレックスタイム制の精算期間の延長

 フレックスタイム制というのは、「始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねる」ことを前提に、「労使協定」で一定の事項を定めることで、精算期間を平均して「1週間40時間」を超えない範囲で労働させることができる制度です。

 

フレックスタイム制 - Wikipedia

 

 この精算期間は、いままで「1ヶ月以内の期間で、労使協定で定めた期間」となっていました。

 

 この精算期間が「3ヶ月」まで延長されようとしています。結果として、労働者の負担が増えることが予想されるので、1ヶ月ごとに区分した期間ごとに「1週間あたりの労働時間が50時間を超えない範囲内」で労働させることができるような制限をかけるようです。

 

 なかなか複雑ですね。機会があれば、フレックスタイム制についても解説スライドを作りたいと思います。

 

 ところで、「時間外」労働に上限規制がかけられようとしていますが、このフレックスタイム制に基づいて労働者が働いた時間は「時間内」労働という取扱です。つまり、今回の法改正で精算期間を3ヶ月までに延長し、1週間あたり50時間を超えない範囲で労働させることができるようになれば、「1週間50時間を超えた分が時間外労働として規制の対象になる」ということです。

 

 過労死につながりかねない規制緩和といっても良いのではないかと思います。

 

2.企画業務型裁量労働制の対象業務拡大

 NHKの討論でも、「高プロ(後ほど登場します)」と混同しているかのような議員さん(あえて名前は言いませんが)がおられましたが、「高プロ」と「裁量労働制」はまったく別のお話です。

 

 企画業務型裁量労働制とは、労使委員会で一定の決議をして所轄労働基準監督署長に届け出た場合、「対象労働者は(物理的な時間として)何時間働いても、労使委員会での決議で定める時間働いたものとみなされる」という制度です。

 

 法律上「みなされる」という言葉を使われた場合は、「みなされた事を、反対事実を証明して覆すことはできない」という取扱になります。

 

 NHK 日曜討論では、この企画業務型裁量労働制について「営業職まで拡大しようとしている」と批判する発言がありました(法律案では、一定の要件を満たした法人営業が対象です)。

 

 裁量労働制でみなされた時間は、「時間外労働の上限規制」にかからないので、規制緩和だといえます。

 

3.高度プロフェッショナル制度の新設

 いわゆる「高プロ」です。「残業代ゼロ法案」としても有名ですね。対象業務が限定された「年収1075万円以上(賞与除く)の労働者」が対象です。

 

 労働基準法に定める、労働時間、休憩、休日、深夜の割増賃金に関する規定が適用除外になります。「深夜割増」の規定を除外されることを考えれば、「管理監督者」の扱いよりも労働者にとってはキビシイ内容といえますね。規制緩和だといえます。

 

まとめ

 「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」の内容のうち、労働基準法に関する項目を順番に取り上げました。

 

 内容を単純に表現すれば、「規制の強化策3つ」と「規制の緩和策3つ」が含まれている・・・といえるでしょう。

 

 規制強化策と規制緩和策は、それぞれ対象とされる労働者が異なります。適用が除外の規定も細かく設定されようとしていますので、単純に「強化3つ」「緩和3つ」と考えることはできませんが、本当に「過労死等ゼロ」に向けた取り組みといえるのか、微妙なところです。

 

 具体的にどのような内容で決着するのか、引き続きこのblogでも取り上げていくことにいたしましょう。

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