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【フレックスタイム制】話題になっていないもう1つの緩和策について考えてみる

 「働き方改革」に関する国会での論戦が「上滑りしている」という記事が掲載されていました。

 

www.asahi.com

 

 リンク先の記事が消えることもあるので、新聞紙面の写真もあげておきましょう。今日の朝日新聞です。

 

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 ここで問題になっているのは、「規制強化」と「規制緩和」の抱き合わせです。野党は、「規制緩和」策の撤回を求めていますが、アレ? 規制緩和策が2つしかありません。法律要綱案では、労働基準法規制緩和案は3つあったはずです。3つめの緩和案については、どのように議論されているのでしょうか?

 

 そこで、今回は、すこしマニアックな話題になりますが、とても大切なお話です。(少なくとも新聞紙上では話題になっていない)3つ目の規制緩和策、「フレックスタイム制の精算期間延長」について確認していきましょう。

 

 

フレックスタイム制とはどんな制度か?

 そもそも「フレックスタイム制」とはどんな制度でしょうか?

 

フレックスタイム制 - Wikipedia

 

 カンタンに書けば、「始終業時刻の決定を労働者に委ねることを条件にした変形労働時間制の一種です」

 

 制度導入により、一定の要件を満たせば、「1週間40時間、1日8時間」というシバリがはずれます。「変形労働時間制」という言葉に注目してください。法定労働時間を限度とした「所定労働時間」を変形するという意味です。

 

 所定労働時間(法定労働時間)といっても、すぐにはピンと来ないかも知れませんね。では、このように表現したらどうでしょう。変形労働時間制で変形するのは、「時間内労働時間」です

 

 つまり、こういうコトです。今回の法律案が提案している労働時間の上限規制は「時間外労働時間の上限」です。くどいようですが、もう一回書きます。今回の法律案が提案している労働時間の上限規制は「時間外の上限だけです」。「時間内」の規制は法律案には含まれていないのです。
(上限規制をされている「時間外労働時間」と対比させる意味で「時間内労働時間」と表現していますが、通常はこういう言い方はしません。念のため)

 

 変形労働時間制の一種である「フレックスタイム制」が緩和されるということは、「時間内労働時間」に関するシバリが緩和されることを意味します

 

ナニが緩和されるのか?

 ではいったい、法律要綱案では「フレックスタイム制」のナニが緩和されるのでしょうか?

 

 それはズバリっ!「精算期間」です。現労基法において、フレックスタイム制の精算期間は「1ヶ月以内」ですが、それを「3ヶ月以内」に延長しようとしています。

 

 「フレックスタイム制とは変形労働時間制の一種だ」と説明しましたが、どのように変形するかというと「精算期間を平均して1週間の法定労働時間を超えない範囲」で所定労働時間(時間内労働時間)を変形するのです。

 

 日ごとの労働時間を見れば「1日8時間」を超えている日があっても、週ごとの労働時間を見れば「1週40時間」を超えている日があっても、結果として、精算期間内の時間内労働時間をトータルして平均した労働時間が変わらない(増えない)ことになります。

 

緩和された結果、どうなるか?

 「精算期間が3ヶ月に延長される」という緩和がおこなわれると、どのような影響がでるでしょうか?

 

 「精算期間が1ヶ月以内」であれば、1ヶ月の時間内労働時間は平均して1週間あたり40時間以内におさまることになります(あたりまえですね)。

 

 けれども、「精算期間が3ヶ月以内」に延長されれば、特定の1ヶ月に注目した場合、所定労働時間の限度(時間内労働時間の限度)を、1週間あたり40時間以上に増やすことができます

 

 カンタンに検証してみましょう。例として取り上げるのは「ギリギリ(株)」です。社長の「儀理野 玄海氏」は、従業員を法律違反しない範囲でギリギリ働かせなければ気が済まない、こまった性格の人物です。
(以前作った時間外労働の上限は?というスライドに登場しました)

 

 例えば、2018年2月の例を考えると、現労基法では、「28日✕40時間÷7日=160時間」が所定労働時間(時間内労働時間)の上限になります。2月の日数28日にかけている「40時間÷7日」というのは、原則である法定労働時間(1週間40時間)をもとに1日あたりの労働時間を計算しています。

 

 では、緩和されるとどうなるのでしょう。2018年2月~4月を精算期間とした場合の2月の例を考えると、法律要綱案では、「28日✕50時間÷7日=200時間」が所定労働時間(時間内労働時間)の上限になります。2月の日数28日にかけている「50時間÷7日」というのは、法律要綱案で精算期間1ヶ月を超える場合のシバリ時間(50時間)をもとに1日あたりの労働時間を計算しています。

 

 結果として2018年2月の総労働時間は、フレックスタイム制規制緩和がなければ「160時間(時間内の上限)+100時間未満(時間外の上限)=260時間未満」が総労働時間の上限となるのに対して、フレックスタイム制規制緩和案が通れば「200時間(時間内の上限)+100時間未満(時間外の上限)=300時間未満」が総労働時間上限になります。

 

 2月は28日ですが、これが31日の月を例に同様に計算すると、規制緩和がなければ「177.1時間+100時間未満=277.1時間未満」のところが、規制緩和により「221.4時間+100時間未満=321.4時間未満」になります。

 

 時間外労働の上限規制が実施されたとしても、1ヶ月の労働時間を合法的に最大44.3時間増やせることになります。

 

 念のため書いておきましょう。

 

 精算期間が3ヶ月になるということで、上記のように1ヶ月の労働時間を最大「44.3時間増やせる」ことになりますが、精算期間3ヶ月全体で「1週40時間」以内に労働時間をおさめなければならないため、他の月の労働時間は減ります。1ヶ月の労働時間が44.3時間増えたとしたら、他の月はそれに見合った時間減るということですね。

 

まとめ

 「一時的に労働時間が増えたとしても、トータルで法定労働時間におさまるならいいじゃないか」という考えもあると思います。

 

 しかし、今回の改正の大きな目的が「過労死をなくす」ということを考えれば、一時的にであれ「最大44.3時間増える」という規制緩和は大丈夫なんでしょうか? 一時的に労働時間が増える場合でも問題があるので「100時間未満」という1ヶ月に対する上限設定が検討されていることを考えると、ほんとにいいのかな・・・と心配になります。

 

 労使間で、1ヶ月100時間「以下」か「未満」か・・・という、非常に緻密(?)な検討がされていたコトを考えると、フレックスタイム制の条件緩和」についても、法律の制定にあたって、キチンと検証していただきたいと思います。

 

 また、フレックスタイム制とは「始終業時刻の決定を労働者に委ねる」ことが前提になっているので、「労働者が労働時間をコントロールできるのでは?」という意見もあると思いますが、本当にそうな・・・と思ってます。

 

 ところで、こういったテーマを考える時、いつも思うのは、労働時間の上限規制を「時間外」にかけるのではなく、「総労働時間の上限規制」とした方がはるかにわかりやすいのにな・・・ということです。今からなんとかならないでしょうか?^^;^^;

 

 なお、本文中に計算違い、勘違い等あれば、やさしくご指摘いただければ幸いです。

 

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